SMC PENTAX 1:3.5/15の特許について
このレンズについては色々なところに話が出ているので、少し記しておこうかと思います。
公式な話がないことがほぼその色々な話が出ていることが要因だと思いますが、1970年代初頭にドイツ・カールツアイス社は日本メーカーのどこかに技術提携先を探していました。その矛先として旭光学工業があった。実際に提携して製品が販売されていたのは、眼鏡関係だったと思います。旭カールツアイス株式会社が1972年にできます。のちにペンタックス-カールツアイス株式会社と改称されます。
1974年には、カールツアイスは日本のヤシカと提携が発表され、1975年にCONTAX RTSとこのカメラのマウントであるY/Cマウント用のカールツアイス設計のT*レンズ群が同時に発売された。
旭光学ではM42マウントであるペンタックススクリューマウントで自動露出機構を色々と苦労してESシリーズ製造販売していたが、マウントの制約があり、マウントの変更を模索していた時期とこのカールツアイスからの技術提携話はカメラの方まで話があったが、旭光学もバヨネットマウント搭載のカメラの開発をしていた時期と重なっているのである。そんな背景があった時期ではあるが、当時の旭光学のレンズ設計者であった高橋泰夫氏が当時カールツアイス社に派遣されることになった。当時のカールツアイスの設計者はErhard Glatzel氏の時代である。
高橋泰夫氏の特許でGB1420672(1972年出願)とGB1422403(1972年出願)のこの2つの特許はどうみても旭光学では利用することはない、ビオゴンタイプの広角レンズの設計の特許が出ている。これは派遣されたときの仕事の一部ではないかと推定している。(当時特注レンズの依頼があった可能性は否定はできません。)
一眼レフの提携をしたかったカールツアイス社は恐らくペンタックスの新しいKマウントの仕様を知っていたのか、Y/CマウントとKマウントの形状が似ていると感じる。
マウント名 マウント内径 フランジバック長
ヤシカコンタックス ー 48.00mm 45.50mm
ペンタックスK ー 48.00mm 45.46mm
これはヤシカコンタックスマウントとペンタックスKマウントのスペックが極めて似ている仕様の一旦であるが、マウント内径は一緒で、フランジバック長は0.04mmしか違わない。
さて、本題の15mmF3.5レンズですが、当時のこの設計のレンズはCarl Zeiss社Dr. Erhard GlatzelのDE2344224C2(1972年9月21日出願)の=US386026の実施例4が非球面で該当している設計であると推定しています。この特許の実施例5は球面設計であるが、SMC PENTAX 1:3.5 15mmの球面設計変更版とは構成が異っている。
ペンタックスの15mmは12群13枚構成で12群目がハイブリット非球面レンズを使ったレンズである。一方のカールツアイス(CZ)のDistagon 15mmF3.5は13群14枚の球面レンズである。つまり、CZの方はこの特許の設計のレンズではないのである。のちにハイブリット非球面レンズの供給がCZからなくなったため、微修正で球面バージョンのレンズが旭光学工業から引き続き同じ13群14枚構成で構成図の変更がほとんどわからない程度の設計変更がなされているのである。区別の仕方とそのへんの経緯を次の図にまとめた。このレンズはTAKUMARの最後の年に出たので、PENTAXレンズとの関係がわかるかと思う。
非球面レンズは距離メモリが球面レンズと異なるのである。