FUJINON 1:1.2 f=5cmの特許について
富士写真フィルムはライカLマウントのレンズを発売していた時期があり、新種ガラスの国産化プロジェクトの成果として明るいレンズの開発を行っていた。
このレンズの設計は富士写真フィルムの土居良一氏の特許出願公告昭31-477(1953年出願)日本特許第222232号=US2718174の4群8枚構成の実施例1が相当すると推定される。この特許には実施例2が5群9枚構成のレンズも掲載されている。このレンズの先行技術としては、US特許のReferencesを見ると、①US1708863(L. Bertele1929年)、②US1779257(Lee Horace William1930年)、③US2186621(L. Bertele1940)Sonnarタイプ、④US2645973(Canon:Ito 1953年)、⑤GB553844(Dallmeyer社1943)が掲載されている。
これらの先行技術特許のレンズをリファレンスの関係を見てみると、客観的にどういう関係で先行技術を元に改良特許として設計されてきたかが想像できる。今回、私がこんな感じの関係図を時々作っているものを公開しておく。
パワー配置は、+(++-)|(-+-)+になっている。第1群は正のパワーで、第2群は3枚貼り合わせで負のパワーになっており、絞りを挟んで第3群は正のパワーになっていて、第4群も正のパワーとなり、4群8枚構成となっている。この第3群の3枚貼り合わせレンズのパワー配置(-+-)が先行特許のたとえばCanonのIto氏の例では第3群の貼り合わせは(+-+)となっていて、このフジノンでは全く反対のパワー配置となっている。
それから、このレンズの後群の第3群の3枚貼り合わせレンズの断面形状が面白い形状で、間に挟まれた第6レンズの径が小さく隙間があるようになっている。この理由はよくわからないが、何か効果があるのだろうか。フレア対策なのだろうか。
像高が高くなると球面収差が負修正気味で、像面弯曲収差も像面側に倒れている。このため、周辺はほんわりとボケると予想される。スポットダイヤグラムを見ると像高が高くなるとぼやけているのがわかる。結果としてMTFも低値で解像度が低いことがわかる。