SMC PENTAX-M 1:1.4 35mm(未発売)の特許について
SMC PENTAX-M 1:1.4 35mmはカタログにも掲載され発売日を心待ちにしていた直前に急遽発売中止になった幻のSMC PENTAX-M 1:1.4 35mm大口径広角レンズでした。
このレンズの特許は旭光学工業の高橋康夫氏の特公昭60-34727=特許1317289(1976年出願)=GB1567226(Filed 1976)の実施例1であると推定される。
幻のレンズみたいになってしまったが、製品販売直前まで行ったレンズであったため、実物を私は何度か見たことがある。しかもどこぞの中古カメラ店に凄い値段で置いてあるのを見たことがあった。
8群10枚構成のレンズで、第1レンズはメニスカス凸レンズ、第2レンズはメニスカス凹レンズ、第3レンズもメニスカス凹レンズから構成される前群(+--:合成焦点距離-41.59mm)からなり、第4群レンズ以降からがマスタレンズ(+)|(-)+++(合成焦点距離+34.42mm)という構成のレトロフォーカス型広角レンズである。
小型軽量Mシリーズ用35mmレンズで全長64.5mmと長くなってしまって、SMC PENTAX-M 35mmF2が長さ42mmですから、この辺もあったとも思う。しかし実際はこのレンズの性能がいまいちだからではないかと思っている。
順番にいつものようにデータを示していこう。
ご覧のように周辺で球面収差は像高75%までよく補正されているのであるが、像面弯曲収差が像高75%付近でサジタル方向とタンジェンシャル方向がクロスしていて周辺でその差が大きくなり、色収差も大きいため、MTF特性もよくない。このため、コントラストが全体に低く甘い像を示すはずだ。あまりにも独特の甘い像を示すので、発売中止になったと想像している。結局旭光学工業からはF2を切る明るい35mmレンズは出ないで終わったことになる。