Angenieux 28mmF3.5の特許について
このレンズの特許はUS2696758A(1952出願1954年登録)Pierre Angenieux氏設計のレンズと推定される。多くの特許はこの特許を先行技術文献として参照されている。
たとえばニコンのNikkor-H AUTO 2.8cmF3.5の特許には先行技術特許としてこの特許が記載されているくらいである。
そんなこともあり、この6群6枚構成のレトロフォーカス型(逆望遠型:Reverse-Telephoto)広角レンズの基本構成の1つになるので今回取り上げておく。早速レンズ構成図を示す。蛇足ですが、同社はRetro-focusの登録商標ができなかったのである。そのため、今日この形式のレンズ形式の名称が使えるのである。
本レンズは第1レンズが凸レンズ(+)と第2レンズが凹レンズ(-)で構成した全体では負のパワーを持つ前群を水色系で示した2群が前群と呼ばれるもので、逆望遠型の基本的な特徴の構成である。この前群と対をなす、正のパワーを全体で構成する後群のレンズをマスタレンズ群とここでは呼ぶことにする。マスタレンズ群は第3レンズ以降の4枚構成からなり、++|-+のパワー配置となっている。
前群の第1レンズの凸レンズはディストーション(歪曲収差)を補正するためであり、第2レンズはバックフォーカスを長くするために凹レンズで構成するようになっている。このレンズは、第1レンズで発生したディストーションが補正しきれていないために-2%近いタル型ディストーションとなっている。
スポットダイヤグラムを見るとわかるが、光軸中心部でも中心像の周りに滲みがあり、フレアが多く、コマ収差が多いことはわかる。コマ収差は前群で発生するのであるが、それを後群の4枚のマスタレンズ群で、うまく打ち消すことが出来ないために、絞り開放ではフレアが多く発生してしまっているのである。このため、コントラストが低下したようなふわ~っとした像を開放では示すと想像される。
最後にMTFであるが、これはいつもの通り幾何光学的MTFが最大になる無限大時のピント位置における幾何光学的MTF図である。ご覧のようにこの時代のレンズの光軸中心付近は比較的よいが、当時の計算量の関係でやはり周辺についてはあまりいい結果を示さない。特にタンジェンシャル(t:赤色の破線)方向とサジタル方向(s:緑色の線)が離れていることからも像面弯曲収差もあり、コマ収差が大きく非点収差も大きいためにMTF特性が低下していることが伺える。このため、解像度が悪い甘い像を示すことがわかる。
#angenieux28mmf3.5
#angenieux