W.B.Rayton博士について
Dr. Wilbur Brambley Rayton(19 November 1884–31 October 1946)
本レンズの設計者であり、アメリ カ光学学会創立メンバーで、1933~1934年同学会長を歴任した。彼はBausch & Lombのスタッフの一員としてキャリアを過ごしましたが、1929 年から 1931 年まではロチェスター 大学光学研究所でも教鞭をとりました。
1926年、彼は(ロチェスター 大学のT.R.ウィルキンスとイーストマン・コダック のロイド・A・ジョーンズとともに)提案された新しい光学研究所で提供される可能性のあるコースの概要を説明する委員会の委員を務めました。彼は映画テレビ技術者協会でも活動し、その組織のためにカメラを設計した。1926 年に、彼は鉱物顕微鏡を開発した。
レイトンのレンズ設計技術は天体観測の進歩に多大な貢献をした。彼は、天体分光器用の高速カメラの対物レンズの設計を専門としていた。1937 年、レイトンは当時「世界最速」と言われるレンズを設計した。天文学者 ミルトン・ヒューマソンは、レイトンのレンズを使用して、天の川銀河 の向こうにある星団を観測した。このレンズにより、遠隔天体の分光測定にかかる時間(恐らく露出時間のこと)が半分に短縮した。
1917 年にアメリ カ光学学会ジャーナルが発行を開始したとき、レイトンはその最初の巻に眼鏡レンズの反射像に関する記事を掲載しました。彼は合計 5 つの記事をJournal Optics Society of Americanに発表した。その中には、新興の米国光学産業における光学ガラスの基準のニーズについて説明した記事も含まれています。
レイトンは 1946 年に亡くなりました。
タイトルレンズとは違うが、当時のカメラの主流であったトリプレットレンズ に取り付け、広角レンズにするフロントコンバージョンレンズの特許も博士は過去に設計している(US1934561出願1932年)。これはレトロフォーカス形式になっており、フォクトレンダー より早いものである。
Bausch & Lomb 1:1.5 f=5cmのレンズの特許データについて
前振りが長くなりましたが、天体観測に関係するレンズを設計していたレイトン博士のレンズ特許を見つけたので、計算してみたのがこのレンズです。実際にこの特許のレンズは用途は不明ですが、実物がネット検索するとあるので、特許では用途は明るい写真撮影用対物レンズあるいはプロジェクターレ ンズになっている口径比F1.5の明るいレンズです。特許は米国特許US2124356(1937年出願)のW.B.Rayton設計のBausch & Lomb社のものである。
レンズ構成図
レンズ構成は、第1レンズがメニスカス凸レンズ、第2レンズもメニスカス凸レンズ・第3レンズは両凸レンズ・第4レンズは凹レンズからなり第2から第4レンズが3枚貼り合わせレンズを形成して第2群となり、ここまでの2群で前群をなし、その後、絞りを介して、後群は第3群として3枚貼り合わせレンズとし、その構成は第5レンズが凸レンズ・第6レンズが凹レンズ・第7レンズが凸レンズからなる3群7枚構成のものである。ガラス種はすべて異なるというものである。今回はガラスとしてはなるべくコーニング社のガラス種をアサイ ンした。パワー配置を改めて書くと、+(++-)|(+-+)となっている。第2群は合成焦点距離 は負のパワーであり、第3群は正のパワーとなり、+(-)|(+)という配置で、基本構造はいわゆるトリプレットを発展させた形式である。WWII以前の設計はコーティングがなかった時代であり、レンズ枚数を増やしたときの各レンズの界面での反射によるゴーストやフレアーを低減させるために貼り合わせレンズが多用された。貼り合わせが面が4箇所あり、また各曲率が小さいものが多く、製造はかなり難しいものがあったものと想像される。
収差図(縦)
収差図(横)
非点収差図
倍率色収差
2nd.Spectra
球面収差は小さく方であるが、いかんせん色収差 が大きく残っていて、像面湾曲収差が負で樽型がやや目立つ。像面湾曲収差が短波長側から長波長側に素直にズレていくレンズが非常に個性的で、中心像は点に写るが、直ぐに像が非点になる特性があるレンズである。
Spotdiagram
スポットダイヤグラム を見ると各残存収差から中心部は点像を示すが、すぐに歪んだ像を示し、最外周は口径食を起こしていることがわかる。