ペンタックスレンズ研究会

ペンタックスレンズ他光学特性データを示します。

(106)SMC PENTAX FA645 1:4 200mmの特許について

SMC PENTAX FA645 1:4 200mmの特許について

 

このレンズはPENTAX 645シリーズ用オートフォーカス望遠レンズの内の1本で、ペンタックス(当時)の泉水隆之氏(ニコンに転職)の設計である特開2000-2275446=日本特許第3505099号(出願1999年)の実施例2と推定される。本特許には実施例が7例あるが、製品に近いものはEDガラスを使われていないことから、実施例1か実施例2の2つのどちらかということになる。市販ガラスが設計値にあるものだけで構成されているものということから恐らく実施例2が該当すると判断いたしました。本レンズは5群6枚構成の望遠レンズである。望遠比は0.97である。645ではフランジバック長が長いシステムのため、望遠比はあまり小さい値にはなっていない。

SMC PENTAX-FA645 1:4 200mmのレンズ構成図

本レンズ構成は第1レンズがメニスカス凸レンズ、第2レンズもメニスカス凸レンズ、第3レンズは凹レンズ、第4レンズが凸レンズと第5レンズの凹レンズを貼り合わせて第4群を成し、ここまでで前群となっている。絞りを介して第6レンズの凸レンズからなり、5群6枚構成の望遠レンズである。パワー配置を書くと、++-(+-)|+となっている。第4群の貼り合わせレンズのパワーは-となっている。このレンズのスペックは200mmF4であるが、設計値は195.6mmF4.1となっている。本特許にはEDレンズの実施例が多数掲載されているが、実際に発売された製品版は通常のガラスが使われている。このレンズもオハラガラス、HOYAガラスおよび光ガラスが使われていると推測されている。蛇足ですが、現在オハラはCANONグループ会社で、光ガラスはニコングループの会社になっている。

SMC PENTAX-FA645 1:4 200mmの収差図(縦)

SMC PENTAX-FA645 1:4 200mmの収差図(横)

SMC PENTAX-FA645 1:4 200mmの非点収差図

SMC PENTAX-FA645 1:4 200mmのLateral Color(倍率の色収差

SMC PENTAX-FA645 1:4 200mmの2nd. Spectra

SMC PENTAX-FA645 1:4 200mmのSpotdiagram

SMC PENTAX-FA645 1:4 200mmのスポットダイヤグラムの波長毎の違い

SMC PENTAX-FA645 1:4 200mmのSpot半径の波長による変化とその像高変化

SMC PENTAX-FA645 1:4 200mmの幾何光学的MTF(7.5/15/30LPM)

SMC PENTAX-FA645 1:4 200mmの幾何光学的MTF(10/20/40LPM)

SMC PENTAX-FA645 1:4 200mmの作例1



(105)Bausch & Lomb 1:1.5 f=5cmのレンズの特許データについて

W.B.Rayton博士について

Dr. Wilbur Brambley Rayton(19 November 1884–31 October 1946)

本レンズの設計者であり、アメリカ光学学会創立メンバーで、1933~1934年同学会長を歴任した。彼はBausch & Lombのスタッフの一員としてキャリアを過ごしましたが、1929 年から 1931 年まではロチェスター大学光学研究所でも教鞭をとりました。

1926年、彼は(ロチェスター大学のT.R.ウィルキンスとイーストマン・コダックのロイド・A・ジョーンズとともに)提案された新しい光学研究所で提供される可能性のあるコースの概要を説明する委員会の委員を務めました。彼は映画テレビ技術者協会でも活動し、その組織のためにカメラを設計した。1926 年に、彼は鉱物顕微鏡を開発した。

レイトンのレンズ設計技術は天体観測の進歩に多大な貢献をした。彼は、天体分光器用の高速カメラの対物レンズの設計を専門としていた。1937 年、レイトンは当時「世界最速」と言われるレンズを設計した。天文学者ミルトン・ヒューマソンは、レイトンのレンズを使用して、天の川銀河の向こうにある星団を観測した。このレンズにより、遠隔天体の分光測定にかかる時間(恐らく露出時間のこと)が半分に短縮した。

1917 年にアメリカ光学学会ジャーナルが発行を開始したとき、レイトンはその最初の巻に眼鏡レンズの反射像に関する記事を掲載しました。彼は合計 5 つの記事をJournal Optics Society of Americanに発表した。その中には、新興の米国光学産業における光学ガラスの基準のニーズについて説明した記事も含まれています。

レイトンは 1946 年に亡くなりました。

タイトルレンズとは違うが、当時のカメラの主流であったトリプレットレンズに取り付け、広角レンズにするフロントコンバージョンレンズの特許も博士は過去に設計している(US1934561出願1932年)。これはレトロフォーカス形式になっており、フォクトレンダーより早いものである。

Bausch & Lomb 1:1.5 f=5cmのレンズの特許データについて 
 

前振りが長くなりましたが、天体観測に関係するレンズを設計していたレイトン博士のレンズ特許を見つけたので、計算してみたのがこのレンズです。実際にこの特許のレンズは用途は不明ですが、実物がネット検索するとあるので、特許では用途は明るい写真撮影用対物レンズあるいはプロジェクターレンズになっている口径比F1.5の明るいレンズです。特許は米国特許US2124356(1937年出願)のW.B.Rayton設計のBausch & Lomb社のものである。

レンズ構成図

レンズ構成は、第1レンズがメニスカス凸レンズ、第2レンズもメニスカス凸レンズ・第3レンズは両凸レンズ・第4レンズは凹レンズからなり第2から第4レンズが3枚貼り合わせレンズを形成して第2群となり、ここまでの2群で前群をなし、その後、絞りを介して、後群は第3群として3枚貼り合わせレンズとし、その構成は第5レンズが凸レンズ・第6レンズが凹レンズ・第7レンズが凸レンズからなる3群7枚構成のものである。ガラス種はすべて異なるというものである。今回はガラスとしてはなるべくコーニング社のガラス種をアサインした。パワー配置を改めて書くと、+(++-)|(+-+)となっている。第2群は合成焦点距離は負のパワーであり、第3群は正のパワーとなり、+(-)|(+)という配置で、基本構造はいわゆるトリプレットを発展させた形式である。WWII以前の設計はコーティングがなかった時代であり、レンズ枚数を増やしたときの各レンズの界面での反射によるゴーストやフレアーを低減させるために貼り合わせレンズが多用された。貼り合わせが面が4箇所あり、また各曲率が小さいものが多く、製造はかなり難しいものがあったものと想像される。

収差図(縦)

収差図(横)

非点収差図

倍率色収差

2nd.Spectra

球面収差は小さく方であるが、いかんせん色収差が大きく残っていて、像面湾曲収差が負で樽型がやや目立つ。像面湾曲収差が短波長側から長波長側に素直にズレていくレンズが非常に個性的で、中心像は点に写るが、直ぐに像が非点になる特性があるレンズである。

Spotdiagram


スポットダイヤグラムを見ると各残存収差から中心部は点像を示すが、すぐに歪んだ像を示し、最外周は口径食を起こしていることがわかる。





 

(104)SMC PENTAX67 1:4 200mmの特許データについて

SMC PENTAX67 1:4 200mmの特許データについて

 

ペンタックス67用200mmF4は、旭光学工業の河村憲明氏の特公昭61-4088(1981年出願)日本特許第1338138号である。本特許には実施例が4例あるが、いずれも200mmとしての設計になります。ここでは、実施例が4例あるがEDレンズが使われている実施例1と2は除かれる。実施例3はガラスが相当品がなく作れないので、残りの実施例4が製作可能なことから実施例4がこのレンズ相当の設計と判断しました。(修正2023.11.28)

 

SMC PENTAX67 1:4 200mmのレンズ構成図

第1レンズが正のメニスカス凸レンズ、第2レンズと第3レンズはメニスカス凹レンズとメニスカス凸レンズの2枚貼り合わせの正のパワーを持つレンズで第2群を形成している。第4レンズが凹レンズで、絞りを介してい第5レンズがメニスカス凹レンズである。パワー配置を記載すると+(-+)-|+の4群5枚構成でいわゆるエルノスタータイプのレンズ形式である。設計値はF4ではなくF4.1である。望遠比は0.9であり、それなりの大きさのレンズである。6x7判ではフランジバック長が長くなるので、望遠比がこのくらいになるのは仕方ない。

SMC PENTAX67 1:4 200mmの収差図(縦)

SMC PENTAX67 1:4 200mmの収差図(横)

SMC PENTAX67 1:4 200mmの非点収差図

SMC PENTAX67 1:4 200mmのLateral Color(倍率色収差)

SMC PENTAX67 1:4 200mmの2nd. Spectra

SMC PENTAX67 1:4 200mmのSpotdiagram

SMC PENTAX67 1:4 200mmの波長毎のSpotdiagram

SMC PENTAX67 1:4 200mmの波長毎のR.M.S.Spot半径の像高による変化

SMC PENTAX67 1:4 200mmのMTF図(7.5/15/30LPM)

SMC PENTAX67 1:4 200mmのMTF図(10/20/40LPM)

作例1 PENTAX 67 モノクロフィルム

作例2 PENTAX K-1MKIIにて撮影につき67判ではなく35mmサイズです


実写作例2を見ると色収差が目立ち、星像の周りにマゼンタ色のハロが見えるのがわかる。マゼンタの生成は青と赤を混ぜることにより生じるので、波長毎のスポットダイヤグラムを見てみるとこの両波長がスポット径が大きくなっていることと、像面側にこの2つの色共に他の色より後ろに焦点を結ぶことからも、実レンズがこの設計に近いことが実証できているように見えます。

(103)SMC PENTAX-A645 1:2.8 45mmの特許データについて

SMC PENTAX-A645 1:2.8 45mmの特許データについて

 

ペンタックス645シリーズの最初のシリーズのレンズの1本であるSMC PENTAX-A645 1:2.8 45mmは、旭光学工業の久保雅春氏の設計である特公昭61-48129(1981年出願)=登録特許第1387297号の実施例3と推定される。本特許は実施例が3例あるが、実施例3だけがガラス種が5種で構成されていて、実施例1と2はガラス種が6種でできていることから、コスト面からガラス種が少ないほうがコストダウンになるはずなのと、ペッツバール和が一番小さいこと、こちらがカタログのレンズ構成図と一番類似していることから実施例3としました。日本特許庁の吉野公夫審査官の参考文献としは、①特開昭51-72432旭光学、②特開昭51-122435旭光学、③特開昭55-77712小西六が記載されている。①と②が杉山氏の特許、③が下倉敏子氏の特許である。

SMC PENTAX-A645 1:2.8 45mmのレンズ構成図

SMC PENTAX-A645 1:2.8 45mmのレンズ構成は、第1レンズがメニスカス凸レンズ、第2レンズがメニスカス凹レンズ、第3レンズはメニスカス凹レンズで、ここまでが前群となり、合成焦点距離は-39.765mmとなっている。後群のマスターレンズは第4レンズは両凸レンズ、第5レンズは両凸レンズ、第6レンズは凹レンズ、第7レンズはメニスカス凸レンズ、第8レンズはメニスカス凹レンズと第9レンズはメニスカス凸レンズからなり貼り合わせの正のパワーの第8群を形成している。マスターレンズの合成焦点距離は+38.689mmである。改めてパワー配置は、+--+|+-+(-+)となる8群9枚構成のレトロフォーカス型広角レンズとなっている。

SMC PENTAX-A645 1:2.8 45mmの収差図(縦)

SMC PENTAX-A645 1:2.8 45mmの収差図(横)

SMC PENTAX-A645 1:2.8 45mmの非点収差図

SMC PENTAX-A645 1:2.8 45mmのLateral Color(倍率色収差)

SMC PENTAX-A645 1:2.8 45mmの2nd.Spectra

SMC PENTAX-A645 1:2.8 45mmのスポットダイヤグラム

SMC PENTAX-A645 1:2.8 45mmの波長毎のスポットダイヤグラム

SMC PENTAX-A645 1:2.8 45mmの波長毎のR.M.S.スポット半径の像高依存性

SMC PENTAX-A645 1:2.8 45mmの幾何光学的MTF(7.5/15/30LPM)

SMC PENTAX-A645 1:2.8 45mmの幾何光学的MTF(10/20/40LPM)

この広角レンズが少し残念なのは非点収差が大きいことと、像面湾曲収差のs方向とt方向の差が大きいことで、周辺の解像度が落ちている要因となっていることだろう。後継システムのP645Zのデジタルカメラでに使用するレンズとしてはお勧めしない。

(102)FUJINON 1:1.2 f=5cmの特許について

FUJINON 1:1.2 f=5cmの特許について

 

富士写真フィルムはライカLマウントのレンズを発売していた時期があり、新種ガラスの国産化プロジェクトの成果として明るいレンズの開発を行っていた。

このレンズの設計は富士写真フィルムの土居良一氏の特許出願公告昭31-477(1953年出願)日本特許第222232号=US2718174の4群8枚構成の実施例1が相当すると推定される。この特許には実施例2が5群9枚構成のレンズも掲載されている。このレンズの先行技術としては、US特許のReferencesを見ると、①US1708863(L. Bertele1929年)、②US1779257(Lee Horace William1930年)、③US2186621(L. Bertele1940)Sonnarタイプ、④US2645973(Canon:Ito 1953年)、⑤GB553844(Dallmeyer社1943)が掲載されている。
これらの先行技術特許のレンズをリファレンスの関係を見てみると、客観的にどういう関係で先行技術を元に改良特許として設計されてきたかが想像できる。今回、私がこんな感じの関係図を時々作っているものを公開しておく。

Fujinon 1:1.2 f=5cmの特許の先行技術特許の関係図

FUJINON 1:1.2 f=5cmのレンズ構成図

パワー配置は、+(++-)|(-+-)+になっている。第1群は正のパワーで、第2群は3枚貼り合わせで負のパワーになっており、絞りを挟んで第3群は正のパワーになっていて、第4群も正のパワーとなり、4群8枚構成となっている。この第3群の3枚貼り合わせレンズのパワー配置(-+-)が先行特許のたとえばCanonのIto氏の例では第3群の貼り合わせは(+-+)となっていて、このフジノンでは全く反対のパワー配置となっている。

それから、このレンズの後群の第3群の3枚貼り合わせレンズの断面形状が面白い形状で、間に挟まれた第6レンズの径が小さく隙間があるようになっている。この理由はよくわからないが、何か効果があるのだろうか。フレア対策なのだろうか。

FUJINON 1:1.2 f=5cmの収差図(縦)

FUJINON 1:1.2 f=5cmの収差図(横)

FUJINON 1:1.2 f=5cmの非点収差図

FUJINON 1:1.2 f=5cmのLateral Color(倍率色収差)

FUJINON 1:1.2 f=5cmの2nd.Spectra(波長によるピント位置移動)

像高が高くなると球面収差が負修正気味で、像面弯曲収差も像面側に倒れている。このため、周辺はほんわりとボケると予想される。スポットダイヤグラムを見ると像高が高くなるとぼやけているのがわかる。結果としてMTFも低値で解像度が低いことがわかる。

FUJINON 1:1.2 f=5cmのスポットダイヤグラム

FUJINON 1:1.2 f=5cmの波長毎のスポットダイヤグラム

FUJINON 1:1.2 f=5cmのスポットサイズ半径の波長毎の像高による変化

FUJINON 1:1.2 f=5cmの幾何光学的MTF(7.5/15/30LPM)

FUJINON 1:1.2 f=5cmの幾何光学的MTF(10/20/40LPM)

 

(101)HD PENTAX-D FA☆85mmF1.4ED SDM AWの特許について

HD PENTAX-D FA☆85mmF1.4ED SDM AWの特許について

 

HD PENTAX-D FA☆85mmF1.4ED SDM AW は、満を持してSMC PENTAX-FA★1:1.4 85mm[IF]の後継レンズとして2020年6月に発売された現行品レンズです(2023.11.11現在)。高級レンズで未だに高価なレンズで前モデルのFA★85mmF1.4の定価の2倍強します。まあ、先代に比べて10群12枚とレンズ枚数も多くかつ非球面レンズもEDレンズも3枚も使用しているから仕方ない。

さて、このレンズの設計は、特許検索では2011年頃から登場する方で、リコーイメージングの能村洋一氏の設計である特開2020-154060(2019年出願)=特許第7172776号=US PAT11402608B2で、日米共に登録特許となっている設計である。この特許には実施例が何と11例も掲載されている。そのため、どれが実製品に近い実施例か探るところから始めなくてはならなかった。いつもカタログなどのメーカー記載のレンズ構成図を探して来て、これと特許の実施例のレンズ構成図と比べて、比較して候補を絞ります。それでもわからないときは、各レンズの半径をトレースしたり、レンズの厚み、レンズ間距離などが近いものと絞り込みを行っています。それでもわからないときはペッツバール和を比べて小さいものを当該製品に一番近い設計としています。

この特許はデジタル仕様の設計を公開データに掲載していて、撮像素子側にあるカバーガラスか当該の波長域を通過させるガラスが設定されているので、その部分は同じなので、実際の鏡筒についているレンズの枚数と構成から探ります。このレンズは10群12枚で、第2・第4・第6レンズにスーパーEDガラスが使用されていて、第12レンズが非球面レンズになっていて、第8群と第9群が共に2枚貼り合わせレンズの実施例を選定する。つまり、-++++++|(-+)(-+)+-のパワー配置となっている。赤はスーパーEDガラス、緑は非球面である。まず、実施例1、実施例2、実施例8と実施例11は3枚貼り合わせレンズがあり、9群12枚構成なので、これは製品とは異なる設計で除外となる。実施例7は第1レンズ形状が異なり、これも除外である。実施例9と実施例10はどちらも第2レンズと第3レンズの面間隔が製品と異なり広いため、これも除外となる。ここまでで残っている実施例は実施例3から6の4例である。実施例5と実施例6はスーパーEDレンズの使用枚数が異なることから除外となる。残りは実施例3と実施例4となるが、両方共同じ構成の10群12枚構成でスーパーEDガラスが同じ群にあり、製品と類似構成である。各レンズ配置位置がカタログ掲載レンズ構成と同じであることと、バックフォーカス長がKマウントのフランジバック長を考えるとミラー干渉の問題から長い方の実施例3が製品に近い設計値であると結論づけました。それではこの実施例3のデータを示します。まずはレンズ構成図から。

HD PENTAX-D FA☆85mmF1.4ED SDM AWのレンズ構成図

このレンズが最初の第1レンズに凹レンズが来ているのは第2レンズがスーパーEDレンズ(オハラS-FPL53と推定)であり、フローライトに比べるとよいが耐摩耗性と耐候性の問題などが通常のガラスより悪いため、その保護を兼ねて負のパワーを最初に持ってくる設計にする必要があり、このような両凹レンズが来る構成になっている。

HD PENTAX-D FA☆85mmF1.4ED SDM AWの収差図(縦)

HD PENTAX-D FA☆85mmF1.4ED SDM AWの収差図(横)

HD PENTAX-D FA☆85mmF1.4ED SDM AWの非点収差図

HD PENTAX-D FA☆85mmF1.4ED SDM AWのLateral Color(倍率色収差

HD PENTAX-D FA☆85mmF1.4ED SDM AWの2nd.Spectra

HD PENTAX-D FA☆85mmF1.4ED SDM AWのスポットダイヤグラム

HD PENTAX-D FA☆85mmF1.4ED SDM AWの波長毎のスポットダイヤグラム

HD PENTAX-D FA☆85mmF1.4ED SDM AWのスポットR.M.S.半径の波長毎の像高による変化

HD PENTAX-D FA☆85mmF1.4ED SDM AWの幾何光学的MTF(7.5/15/30LPM)

HD PENTAX-D FA☆85mmF1.4ED SDM AWの幾何光学的MTF(10/20/40LPM)

不満な点をいうと球面収差が負修正気味で、像高が高い部分で像面側に倒れていて、像面湾曲収差がsとtで像高が低いところから離れている点、非点収差も同様のプロファイルである点が残存色収差と共にスポット像の劣化を招いているように見える要因だろう。天体写真に使うには少し不満があるレンズと予想される。流石に高性能レンズの片鱗が見て取れるが、解像度重視というよりある程度階調も重視されているような気がする。

(100)SMC PENTAX FA★1:1.4 85mm[IF]の特許について

SMC PENTAX FA★シリーズについて

 

PENTAXオートフォーカスの第2世代レンズシリーズであるFAシリーズには高級レンズとしての★スターレンズが存在している。これらのスターレンズはエンジニアリングプラスチックに銀塗装が施されている鏡筒デザインで非常に目立つレンズであった。FA★レンズを列記すると、①FA★24mmF2AL(1991)、②FA★28-70mm F2.8(1994)、③FA★ 80-200mm F2.8(1994)、④FA★ 85mm F1.4(1992)、⑤FA★ 200mm F2.8(1993)、⑥FA★ 200mm F4 Macro(2000)、⑦FA★ 250-600mm F5.6(1991)、⑧FA★ 300mm F2.8(1994)、⑨FA★ 300mm F4.5(1991)、⑩FA★ 400mm F5.6(1997)、⑪FA★ 600mm F4(1991)の11本である。()内は発売年であるが、最初は1991年に登場し、2000年までの間にこれだけのラインナップとなったものである。現在のペンタックスのラインナップと比べると時代を感じます。今までこの中で紹介できたのは、①と⑨だけかと思う。

それではこの中の一番有名なレンズである④FA★ 85mm F1.4(1992)を100本目の区切りのレンズとして今回紹介する。すでに旧ホームページ掲載していたのであるが、データを加えて今回改めてご紹介します。

SMC PENTAX FA★1:1.4 85mm[IF]の特許について

このレンズの特許は、旭光学工業(当時)の平川 純氏による日本登録特許第2915985号=特開平2-200909(1989年出願)=US5172274Aである。この特許にはF1.8、F1.7、F1.4の中望遠レンズの実施例が6例記載されていて、その内F1.4のレンズは実施例4、5、6である。この内実施例5がカタログ記載の情報からこのレンズの特許と推定されます。本レンズは1992年に発売され、2005年7月になって製造中止になったとのこと。理由は電気部品が調達不能になったこと ということである。電気部品がある製品はこれがあるから怖いのである。これから 大事に使っていきたいレンズである。私は1992に新品購入し、現在も使っているお気に入りのレンズです。当時はポートレート撮影によく使っていたが、最近はポートレート撮影していないので、出番は少なくなってしまった。

SMC PENTAX FA★1:1.4 85mm[IF]のレンズ構成図

SMC PENTAX FA★1:1.4 85mm[IF]のレンズの動作

レンズ構成は、++-+|-(-+)+のパワー配置となっている。第1レンズと第2レンズは同じガラスの高屈折率ガラスを使用したメニスカス凸レンズが使われ、第3レンズは負のメニスカスレンズからなり、第4レンズはメニスカス凸レンズを介して、絞り、後群は第5レンズの凹レンズ、第6レンズと第7レンズは貼り合わせのレンズとなり、第8レンズは凸レンズからなる7群8枚構成となっている。本レンズ大きな特徴は、第4レンズから第8レンズを駆動してピント調整を行う機構となっていて、A★85mmF1.4のfreeシステムとはことなるIF方式となっている。

筆者所有SMC PENTAX FA★1::1.4 85mm[IF](Z-1pに取り付けたとき)

平川氏はカメラ誌にも時々御本人が出られていましたので,知って いる方も多いと思います。このレンズは氏の傑作レンズの内の1本として一部の ユーザーでは絶対的な支持のある有名なレンズとなっていた。この光学系が如何 に素晴らしいものかを物語る事実として,本レンズの特許を参考にして改良した 設計を行ったと明確に特許に書いてある例がある。それは,ニコンAF-Nikkor85/ 1.4Dの特許で,この光学系の改良版を出したということで,こ のレンズの優秀さを物語っていると言えよう。
 開放から解像度どちらかというと質感とか階調重視の設計で全撮影距離で良好な像を示す設計がフィルム時代の当時として優秀な設計がなされている。IF方式の欠点であったボケの汚さを解消した画期的な設計レンズで,優秀な中望遠レンズです。開放から1.5段絞り込んだ当たりは非常においしい描写を示し, 開放から高解像度である。ポートレートには自然な発色と奇麗なボケを活かした作画が可能で凄いレンズです。

SMC PENTAX FA★1:1.4 85mm[IF]の収差図(縦)

SMC PENTAX FA★1:1.4 85mm[IF]の収差図(横)

SMC PENTAX FA★1:1.4 85mm[IF]の非点収差図

SMC PENTAX FA★1:1.4 85mm[IF]のLateral color (倍率色収差)

SMC PENTAX FA★1:1.4 85mm[IF]の2nd. Spectra

SMC PENTAX FA★1:1.4 85mm[IF]のスポットダイヤグラム

SMC PENTAX FA★1:1.4 85mm[IF]の波長毎のスポットダイヤグラム

SMC PENTAX FA★1:1.4 85mm[IF]のR.M.Sスポット半径の波長毎の像高による変化

SMC PENTAX FA★1:1.4 85mm[IF]の幾何光学的MTF(7.5/15/30LPM)

SMC PENTAX FA★1:1.4 85mm[IF]の幾何光学的MTF(10/20/40LPM)

SMC PENTAX FA★1:1.4 85mm[IF]の作例1(LX,F2.8,AGFACHROME RSXII 100)

SMC PENTAX FA★1:1.4 85mm[IF]の作例2(LX,F4、TMX)

SMC PENTAX FA★1:1.4 85mm[IF]の作例3(F1.4開放)